高次脳機能障害について

高次脳機能障害とは

交通事故にあうと後遺症がいつまでも残ったり様々な症状を発症することがあるとされていますが、その中でも高次脳機能障害という症状があるのをご存知でしょうか。

あまり耳慣れない言葉なので良く知らないという人も多いと思われますが、高次脳機能障害とはどんな症状なのか、そしてその原因について考えてみましょう。

私たちは普段、意識することなく物の読み書きをしたり言葉を使って話したり、何かを考えたり、忘れないように記憶するなどの活動を行っていますが、これはすべて脳の働きによるものだとされています。

このように、生活の中で行われる言語や記憶、思考や空間認知といった脳による働きのことを高次脳機能と呼びます。

高次脳機能障害とは、何らかの原因によって脳の働きができなくなり高次脳機能が正常に働かなくなる症状のことを指します。

人によって重度、軽度は様々ですが高次機能が上手に働かなくなることで日常生活をスムーズに送れなくなり生活への適応が難しくなる状態になっていると高次機能障害であると言えます。

こうした症状は、先天的な疾患や進行性の疾患、精神疾患などが原因となって生じることもあるほかに、交通事故による頭部の外傷や脳卒中、脳腫瘍など後天的な脳の疾患などによって引き起こされることがあるとされています。

ただ、高次脳機能障害という言葉は交通事故による脳の損傷や脳の疾患など後天的な原因よって引き起こされた場合に使用することが多いとされています。

同じく後天的な脳の疾患によって症状が出る場合においても損傷部位によって症状の出方が異なるとされています。

高次脳機能障害の症状

高次脳機能障害においては、損傷部位が左脳なのか右脳であるのかによっても症状が異なるとされています。

まず、左脳を損傷した場合には話す、聞く、読む、書くができない失語となったり、数字がわからないなどの失算、歯ブラシやトイレの使い方など日常的な行動ができなくなるなどの失行、家族の名前や物の名前がわからなくなるなどの視覚失認などの症状があらわれます。

一方、右脳を損傷した場合には体の左側にあるものが認識でないなどの半側空間無視やなじみのある場所なのにわからなくなったり道に迷ってしまう地誌的障害などの症状が出るとされています。

様々な症状があるとされていますが、その中でも特徴的ないくつかの障害があるとされています。

記憶障害

新しいことを記憶できなくなる、あるいはしにくくなったりしまったものをどこにしまったのか思い出せない、曜日や日付感覚があいまいになって把握できなくなるなどの症状は脳の側頭葉内部を損傷したことによる記憶障害が原因と言えます。

簡単な約束事が守れなくなったり同じことを何度も質問する場合には記憶障害の可能性があります。

古い記憶や最近の記憶などを部分的に覚えている場合もありますが、重症だと事故前と事故後の全ての記憶を忘れてしまっている、或いは保てないなどの症状があります。

注意障害

ぼんやりしていてミスが多くなる、一つのことに集中できずに注意力が散漫になる一度に二つ以上に事をすると混乱する、気が散りやすいなどの症状が出ている場合には、前頭葉や頭頂葉などを損傷したことによる注意障害であると言えます。

行動に一貫性がなくなり話しかけても反応が遅い、ぼんやりしている時間が増えて話を聞きながらメモをするなどの行動ができなくなった場合には注意障害の可能性があると言えます。

常にぼんやりしていて何かに集中することができず、何かをやらせても15分ももちません。新しい刺激にとらわれやすく、二つの事を同時にすることが困難になります。

行動障害

すぐに興奮して暴力をふるう、子供のようにかんしゃくを起こして急に泣き出したり怒り出すことがある、

感情の抑制がきかなくなり自分が話や輪の中心になっていないと満足しない、場違いな行動したり他人に付くまとって迷惑な行為をするなどの症状がみられる場合には社会的行動障害の可能性があると言えます。

自分で計画を立てて物事を実行する事ができず、約束の時間に遅刻をしたりします。与えられたどの仕事も最後までこなすことができず、また別の言葉で同じ仕事内容を指示するとできなくなります。

性格の変化

今まで穏やかだった人でもまるで別人のような行動や言動をするようになるので周囲の人は性格変化したように感じることもあるとされています。

社会的な行動にも変化がみられ、それまで活発だった人でも、一日中ベットにもぐりっばなしになる事もあります。

また病気を患う前までは温厚だった人でも、思い通りにならないと他人に暴力を振るったり、大声を出したりし、対人関係がままならなくなります。依存性もみられ、人につきまとったりします。自傷行為やみだらな行為をする場合もあります。

遂行機能障害

段取りを無視して気ままに作業する、あるいは思いつくままに行動するなど論理的に考えたり計画を立てたり問題を解決することができなくなる場合には、遂行機能障害かもしれません。

病識の欠如

病識欠如も、高次脳機能が正常に働かなくなることで起こる障害の一つで比較的軽度の症状の場合にあらわれることが多いとされており、自分が障害を持っていることを認められない、障害を否定する発言や行動をするようになることがあるとされています。

脳というのは、私たち人間が考えているよりも複雑な働きをしているために、少しでも損傷することでそれが大きな影響となってしまうことが多く、人によっては助けを借りないと日常生活を普通に送れなくなることもあるとされています。

特に交通事故の場合、脳のどの部分を損傷しているのかは怪我が回復して本人が話せるようになるまでわからないために、障害の症状が出た本人だけに限らず周囲の人間まで巻き込んでしまうことも少なくありません。

華族や身近な人が高次脳機能障害を発症した場合に直ちに医療機関に受診して検査を受けることをおすすめします。

交通事故後に上記のような症状がみられた場合は、高次脳機能障害を疑うべきです。

また、身体の傷害としては、片麻痺、運動失調などがあげられます。

その他、道具が上手く使えなかったり、日常の動作がぎこちなくなります。

高次脳障害は後遺障害に該当します。したがって慰謝料請求が可能です。

交通事故による高次脳機能障害の後遺障害等級と慰謝料

高次脳機能障害となると、その度合いに応じて、後遺障害等級が認定されます。

たとえば、前述の4つの能力の失われる程度に着目して、障害等級(3,5,7,9,12,14級)が設けられていますが、日常生活にも介護が必要な場合は、より重い等級(1,2級)に該当するように指定されています。

この、後遺障害等級のどの等級に認定される、つまり、該当するかは、慰謝料や賠償金の額に関係しますので、大切な問題となります。

特に高次脳機能障害の場合、同じような症状であっても、目に見えづらい障害となりますので、証拠資料(病院からの検査票や日常生活状況報告書等)により、認定される級が大きく変わってしまう場合があります。

慰謝料についてですが、やはり、どの等級に認定されるかにより、相場は大きく変わってきます。また、等級が認定されているのであれば、弁護士に依頼するかしないかでも慰謝料の金額は大きく変わってきます。

相談の際、概算で慰謝料の金額を聞くこともできますので、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。

交通事故による高次脳機能障害の回復までの流れ

回復までの流れとしては、治療が欠かせませんが、まずは脳の検査を行います。検査によって損傷を負った部位を特定して症状固定をします。

その後は医師の診察を受けながら治療を受けることになりますが、交通事故によって高次脳機能障害が起きたときは、後遺障害等級認定を受けることになります。

等級によって加入している自動車保険から保険金が支給されます。また、等級によって損害賠償請求にも影響があるので、病院でしっかり検査をして後遺障害等級認定を受けることが大事です。

保険金や損害賠償金の手続きが終わったら、高次脳機能障害を克服するためにリハビリが必要になります。

脳への障害は継続的なリハビリが欠かせませんから、病院や医師と一緒になって障害を克服することを目指します。

また国が設置する国立障害者リハビリセンターには、高次脳機能障害情報支援センターで支援や支援機関に関する情報を得ることができるようになっています。